犬の涙やけ(流涙症)の原因について」と「犬の涙やけケア方法~犬の涙やけを予防・改善するために~」でお伝えしたように、流涙症(以下、涙やけ)を改善させるには、原因を究明して適切な処置・治療をすることが必要となります。

しかし、涙やけがアレルギー性疾患に起因する場合や、短鼻犬種にみられる先天的な浅眼窩に関連する場合には、涙やけを簡単に改善させることは難しくなります。
 

~アレルギー性疾患に起因する涙やけのケア~

犬にアレルギーを引き起こす原因(アレルゲン)はたくさんあり、アレルギーを改善するためには、アレルゲンとの接触を避けなくてはなりません。

まずは、何がアレルゲンとなっているのかを調べるため、動物病院でアレルギー血液検査を受けることをおすすめします。

アレルギー検査では、確実にアレルゲンを確定することは難しいのですが、可能性のあるアレルゲンを推測することができます。

アレルゲンが推定されても、治療により良化するまでには時間を要します。また、アレルゲンが花粉やハウスダストなど環境中にある場合、アレルゲンとの接触を完全に避けることは難しくなります。

そのような場合には、以下のような補完・代替療法で症状を緩和させる方法があります。

アレルギー症状を緩和する

鍼灸やレーザー鍼灸

鍼灸およびレーザー鍼灸とは、身体に生じた異常を、各個体が持つ治癒力を高めることにより徐々に改善させていく治療法です。経穴(ツボ)に鍼灸用針を刺入したり灸を据えたり、もしくはレーザーを照射して刺激を与えることにより、炎症や痛みを緩和し、身体を健康な状態へと改善させることができます。

小動物(犬や猫)の鍼灸は、最近では日本や海外でずいぶん普及してきていますが、動物(牛や豚など)の鍼灸というのは中国で3000年以上も昔から実施されている最古の獣医療でもあるのです。

現在、一般的に認識されている犬の経穴(ツボ)はおよそ136箇所あります。そのなかで、適当な経穴に刺激を与えることにより、各疾患や病態を緩和させる効果が得られます。

アレルギー症状を緩和させるための鍼灸では、通常、身体の免疫機能を向上させる経穴が使用されています。各獣医師が鍼灸を学んだバックグランドと積み重ねた経験により、使用する経穴は若干異なるかもしれません。

鍼灸やレーザー鍼灸の治療回数は、症状に応じて異なりますが、通常は週に1~2回を数回行い、その後は病状に合わせて2週間に1回、3週間に1回、月に1回というペースで数か月間~半年続けることにより症状の良化が期待できます。

指圧

指圧と聞くといろいろなタイプのマッサージを思い浮かべるかもしれません。ここでお話しする指圧とは、経穴を刺激するマッサージ法です。

お家でできるアレルギー疾患起因性流涙症の指圧には、免疫機能と目の機能を向上させる経穴を使用します。ただし、眼の感染や腫瘍、外傷を伴う症例に対してはマッサージは禁忌です。

涙やけの原因がアレルギー疾患、もしくは先天的な浅眼窩と診断された症例に適した療法です。では、実際にどの経穴を刺激したらよいのでしょうか?

以下、比較的効果が高く、探しやすい経穴を選んでいます。

免疫機能を向上させる経穴
  • LI-4(合谷):前肢の第1中手骨と第2中手骨の陥凹部、狼爪(第1指)の付け根
  • LI-11(曲池):肘関節の外側、上腕骨と橈骨の間
  • ST-36(足三里):後肢、膝の外側下数センチメートルの筋肉溝
  • GV-14(大椎):背中のライン、最後頸椎と第1胸椎の間
  • 眼の機能を向上させる経穴
  • ST1(承泣):下眼瞼の目頭より
  • ST-2(四白):SI-1の下
  • GB-1(瞳子髎):目の縁
  • BL-1(睛明):目頭の
  • BL-2(攅竹):上眼瞼の目頭より
  • GB-14(陽白):上眼瞼の真ん中
  • これらの経穴を、やさしくゆっくりと指で押し、5~10秒間保持します。ゆっくりと指をもとに戻し、数回繰り返します。1日に1回、状態が良化してきたら、3日に1回のペースで行います。目の経穴は、眼に近い部分にあるため、眼を傷つけないよう、まずは、顔のマッサージ、目のまわりのマッサージからはじめ、リラックスした状態で目の指圧を行いましょう。
     

    サプリメント

    涙やけの原因がアレルギーと思われる症例に対しては、免疫機能を向上させるためのサプリメントが効果的でしょう。サプリメントは通常投与し始めてすぐに効果がみられるものは少なく、数週間から数か月経ってから症状の緩和や良化がみられることが多いようです。

    プロバイオティクス

    腸内細菌と聞くと、“おなかの調子を整える”効果を思いつくかもしれません。これまでにたくさんの研究から、腸は身体の重要な免役器官と考えられるようになりました。

    そのため、腸内細菌叢(善玉腸内細菌と悪玉腸内細菌のバランス)を整えることにより、免疫機能の向上が期待されます。また、脳の疾患など、様々な病態に効果を示す可能性があるとも考えられています。

    犬の腸内にも、ビフィズス菌や乳酸菌、大腸菌、連鎖球菌などたくさんの腸内細菌が住んでいます。この腸内細菌叢を整える効果のあるサプリメントのひとつに、プロバイオティクスがあります。プロバイオティクスとは、腸内細菌叢を整える働きのある微生物、もしくは微生物の代謝物から生成されています。

    最近では、いろいろな犬用プロバイオティクスが市販されていますが、犬への効果が実証されている微生物はまだ多くはありません。プロバイオティクスを使用する際には、以下の微生物が含まれている製品をお勧めします。

  • Bifidobacterium lactis
  • Bifidobacterium animalis
  • Bifidobacterium longum
  • Bifidobacterium bifidum
  • Lactobacillus acidophilus
  • Lactobacillus casei
  • Lactobacillus plantarum
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    また、いくつかの調査では、プロバイオティクス製品、もしくはプロバイオティクスが含まれると表示されたドッグフードなどに、表記されているほどの微生物は存在していない可能性が高いという結果が報告されています。

    これは、プロバイオティクスの微生物は高温など不適当な環境では死滅してしまうためと考えられます。そのため、冷蔵保存タイプの、適切な含有微生物数のプロバイオティクスをおすすめします。

    ビタミンC

    犬は自らビタミンCを生成することができる動物です。しかし、感染や病気、投薬、ストレス、加齢などにより産生量は少なくなるといわれています。

    ビタミンCは、免疫機能を高めたり、靭帯や軟骨などの損傷、外傷などの治癒促進効果などいろいろな働きをしており、アレルギーや感染、腫瘍、関節炎や股関節形成不全症などに対するサプリメントとして効果があると考えられています。

    ビタミンCにはいくつかのタイプがあります。サプリメントでよくみられるのは、アスコルビン酸ですが、酸度が強く、下痢を起こすことがあります。

    アスコルビン酸よりも、おなかにやさしいビタミンCは緩衝ビタミンC(アスコルビン酸ナトリウムなど)です。ビタミンCのサプリメントを購入する際には、成分表示欄で詳細を確認するといいかもしれません。

    食餌療法(除去食療法)

    アレルギー血液検査で食物アレルゲンが推定された場合には、その食物が含まれていないフードに変えることでアレルギーは軽減されていくでしょう。

    しかし、血液検査でどのアレルゲンも推定されず、涙やけの他の原因も除外された場合には、食餌療法を試してみるとよいかもしれません。

    食餌療法では、低アレルギーフード、もしくは添加物と穀物が一切含まれていない良質なタンパク質を含むフードから1種類を選び、最低6週間、効果がみられるまで12週間、そのフードだけを与えます。(トリーツ、サプリメント、ミルクなどの投与もストップしますが、そのフードをおやつとして与えることは構いません。)

    6~12週間で症状の改善がみられた場合、そのフードをメインとしていきます。もし、以前のフードにアレルゲンが含まれていたかどうかを確認したい場合には、以前のフードを与えてみます。

    以前のフードがアレルギーの原因であるならば、数日もしく数週間摂取することで、アレルギーが再発するでしょう。ここまでが、一般的な除去食療法の一連となりますが、以前のフードを与えて確定させる必要は必ずしもありません。

    その後、他のフードにアレルゲンが含まれていないかを確認するためには、約6週間ごとに1種類づつ、フードもしくはおやつを加えてみる方法があります。

    ~その他のケア~

    科学的に効果は実証されていませんが、以下のような涙やけのケア法も紹介されています。各療法を試す際には、正しい実施法と副作用を認識してからお試しすることをおすすめします。

    涙やけの着色をきれいにするため

    コロイダルシルバー(コロイド状銀)

    コロイダルシルバーとは、銀の微粒子を含む液体状のサプリメントです。コロイダルシルバーには殺菌作用があると信じられており、ローマやギリシアで長い間使われてきました。

    最近では、殺菌効果のあるサプリメントとして犬にも使用されています。使用法は、飲み水に混ぜて投与したり、口から直接投与するほか、局所外用剤として患部に塗布する方法が一般的です。

    ただ、このコロイダルシルバーの殺菌効果については、学術的には実証されておらず、銀分子は体に蓄積するという性質を持つため、銀皮症など、重篤な副作用を起こす危険性があります。

    アメリカのFDAは、1999年にコロイダルシルバーの使用に関して注意を喚起しています。

    海外では、犬の涙やけをきれいにするため、このコロイダルシルバーを推奨している病院があります。もし、涙やけをきれいにするため、コロイダルシルバーを試みてみようという場合には、ガラス製の遮光ビンに入った、良質のコロイダルシルバーを購入し、製造元の指示に従い、外用として短期間使用してみる方法がよいかもしれません。

    パセリ

    パセリには、ビタミンA、C、K、葉酸、鉄、カルシウム、マグネシウムなどたくさんの栄養素が含まれています。そして、炎症や酸化ストレス、口臭、癌など、いろいろな病態に効果的だといわれています。

    パセリに涙やけをきれいにする効果があることは実証されていませんが、パセリの持つ様々な効用から、涙やけのケアとして推奨されているようです。

    投与法は、新鮮な生のパセリを少量、細かく刻んでごはんに混ぜて与えます。週に1~2回の投与をおよそ6週間試してみるとよいそうです。

    注意していただきたいのは、スプリングパセリ(Cymopterus watsonii)と呼ばれる植物は、犬に毒性を示すため、与えないように注意してください。スプリングパセリは、人参の仲間ですが、葉の部分がパセリに若干似ています。スプリングパセリを摂取してしまうと、皮膚炎や目の障害を起こしてしまいます。

    参考文献およびURL

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    [14]Parsley poisoning in dogs
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